秋のデザインイベント特集 11/3
三連休の最終日、先月末からスタートしたデザインイベントもほとんどの会場が今日最終日を迎えます。
初めに向かったのは、五反田の5TANDA SONIC(ゴタンダソニック)で行われている“prototype EXHIBITION 02”の展示会場。
このイベントはプロダクトデザイナー、家具デザイナー、建築家など様々なジャ ンルで活動するデザイナーの「PROTOTYPE」=試作品の展示会です。同時に、プロトタイプを検討する過程で作成する、多様なモデルを展示することで、デザイナーの背後にあるアイデア、思考方法を、製作過程やプロトタイプを通して読み解くことが出来ます。
こちらの椅子は、林裕輔と安西葉子からなる“DRILL DESIGN ”の作品。合板の可能性を追求する「合板研究所」においてさまざまな合板を製作しています。
色のついた木口が特徴的なこの合板は、シナ合板の間に色紙を交互に挟み込んで積層して作られています。そうする事で、美しい色のついたストライプ模様がついた合板が出来上がります。
“WOODEN FRAME”と名付けられたこちらの額縁は、その名の通り天然の木材が大胆に使われた、山口誠氏の作品。一見すると簡単につくれそうなデザインですが、フレーム全体に年輪や色の変化が途切れること無く連続して見えるような配慮や、額縁のとしての強度を保たせる厚みや断面形状が考えられています。
この黒い素材、見ただけでは何で出来ているか分かりませんでした。熊谷彰博氏の作品は、産業廃棄物となったカーボンを使用したプロダクトです。
切れ端となったカーボンを集積することで、新たに一つの素材として使用する試みの作品です。近くでよく見ると、同じ黒の中にもカーボン素材特有のテクスチャーが見え隠れしていて、角度によって違う表情が浮かび上がります。光を吸い込むかのようなマットな質感も、素材としての可能性を秘めていると感じました。
植物の根が三角形のアクリルに封じ込められた、寺山紀彦氏の作品。実はこの根は1cm間隔に広げられている三角定規になっています。
「野原に咲いている花、その花を支えている根っこは地面の中で広がっています。普段見ることはないその根っこは、もしかすると綺麗に1cm間隔で広がっているかもしれません。」
こんな非常におもしろい考え方を基に製作されています。発想面も然ることながら、作るのはもっとたいへんだろうなぁ、なんて思いながら見ていました。
日本には古くから葉の上でご飯を食べる風習があります。思えば、人類にとって最初の食器は、「葉」だったに違いありません。葉の上でご飯を食べる時、何故か気持ちがいいと思うのは、人間の古い記憶がそうさせるのでしょうか。
人類の食器の原点を、現代的な視点で製作した“nosigner”のランチョンマット。
このランチョンマットは、5cm程度のある小さな葉を10倍の大きさに拡大し、緻密な葉脈を丁寧に写し取られています。「自然の中にある、驚くほど豊かな構造をお食事とともに味わっていただきたい」というメッセージが込められた作品です。
“prototype EXHIBITION 02”の後に向かった先は、乃木坂で行われている“DeLuxe?”という展示イベント。
「デラックス」というゴージャスでスペシャルな響きを持つ単語。単語からイメージするのは、普通よりワンランク上の高級で贅沢な何か。だけど、本当の意味での「デラックス」とは何か?
身近にある普通のものだって、工夫次第で何か特別なものに生まれ変わるし、それによって「デラックス」で幸せな気分になれるかもしれない。という考えの基、国内外8組のクリエーターが梱包資材の“プチプチ”を使ったプロダクトを発表する展示会です。
プチプチを積層して作られたこのスツールは、チューリッヒで活動する若手デザイナーデュオ“Yuniic”の2人の作品。
質感の異なる数種類のプチプチを束ねて作られています。梱包資材なので、適度なクッション性があります。尚かつ軽く、水にも強いのでアウトドアファニチャーとしても発展させることが可能ではないでしょうか。
こちらの照明は、インテリア・プロダクトデザイナーとして活動する川野博氏の作品。“Kasumi pendant lamp”と名付けられた今回のペンダントランプは、リング状に切り出されたプチプチを縦に積層することで、断面から柔らかな光が漏れる仕上がりとなっています。
15cmほどに切り取られたプチプチ、その隣にはそれを丸めた形状のプチプチ。一見するとなんだか分からない作品です。近づいて見てみると、プチプチの一粒一粒には何やら液体らしきものが詰められているようです。
作品から目線を上げて、目の前のキャプションに目をやると、その作品の謎が解決しました。
プチプチに詰められていた液体の正体はシャボン液で、プチプチを潰して丸めるて息を吹くことで、シャボン玉が出来るというものだったのです。
なんでも、この作品のためにデザイナー自らプチプチの中にシャボン液を1つ1つ詰めて、特注シートを製作したそうです。中に詰めたシャボン液も、良く膨らむ特製の調合をしたとのことです。
DeLuxe?展を見ていると、ちょうどテレビの取材が入っていました。話を聞くと、スウェーデンの国営放送の取材クルーだったそうです。国際色豊かなクリエーターが集まった展示会だという事を感じた一幕でした。
場所を移し、次に訪れたのは株式会社ワールドの青山ビル。ここで行われているのは、東京初となる世界的建築家フランク・O・ゲーリーの「東京ベンチ」の展示。
優に30人は座れるであろう巨大なベンチは、フランク・O・ゲーリーらしい大胆な曲線使いが特徴的なスケール感のある作品でした。有機的なラインではありますが、ソフトウェア技術に精通するフランク・O・ゲーリーらしく、緻密なモデリングと構造解析を基にデザインされたベンチとなっています。
細い角材で構成されているのですが、複雑且つ緻密な構造なため、非常に高い精度の求められるつくりとなっています。このつくりだと手作業による部分が多いので、製作に携わった方々はさぞ苦労されたのではないかと思います。
今回のイベント期間中、最後に訪れたのは、東京ミッドタウンで行われた“DESIGN TOUCH Auction”の会場。
会場には、日本のデザイン史を彩る名作家具の数々が展示され、それらがオークションにかけられていました。非常に希少価値の高い作品も多く、デザイン好きや家具フリークの一般の来場者も多く見受けられました。
海外には数百万〜数千万円を越えるような高額商品を扱うオークションもあるように、将来的には日本でも家具オークションの文化が根付く一旦となれば良いですね。某ポータルサイトのオークションだけでなく、家具の財産的価値が認められるような社会になれば、日本の家具産業も少しは発展するのではないでしょうか。
毎年あっという間に過ぎ去ってしまう秋のデザインイベント。ここ数年でようやくイベントとして定着しつつあると感じますが、お祭り的な雰囲気から脱していないと感じてしまいます。業界的にも一般来場者にも、デザインがより身近なものになるのは良いのですが、本当の意味でのデザインとは一体なんなのでしょうか?
より良いデザインが、より多くの人のためになる。
そんなデザインの発表の場となれば、もっと意義のあるイベントに発展するのではと思います。
同じ業界に身を置く者として、そんな風に感じた数日間でした。
(Ken Nozawa)
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